《郁君、やっぱり走っていい?》

「は? ダメだっつーの」

《あ! 郁君!》

「え?」



俺を呼ぶ声が別の方からも聞こえてきて。

そっちに目線を向けると、走ってくる乃亜がいて。



「あ、バカ。走んなっつったろ」

「えへへ、お待たせ!」



そう俺を見上げて、無防備な笑顔を向けたりするから。



「バーカ」



そう言って誤魔化してんのに。