《ごめんね、急ぐからっ》 「あ、急ぐな!」 《ふぇ?》 「急いだら絶対に転ぶから、お前」 乃亜が急いで良かったことなんて、今まで一度だってない。 絶対に、ない。 そう言ってんのに。 《って、わぁっ!》 って耳元には響く叫び声。 「ちょ、乃亜!?」 《っぶなーい》 「おい、乃亜?」 《あ、大丈夫》 って何が大丈夫なんだよ。 笑って言ってんじゃねーぞ。 「だから言ってんのに」 はぁーって呆れた溜息が零れる。