待ち合わせ時間から15分過ぎた頃。 「……またかよ」 俺は小さく溜息と共に呟いた。 沢木郁。 もうすぐ卒業して、就職する予定の高校3年生。 ポケットに入れた携帯が着信を知らせる。 表示された名前に、やっぱりな……そう心の中で呟いて、通話ボタンを押した。 「もしもし、乃亜?」 電話は、俺の彼女の乃亜からで。 今、待ち合わせに遅れている相手。 《郁君ー、ごめんなさぁい!》 息切れしながら、泣きそうな声を出している乃亜の表情は想像がつく。 「……また遅刻かよ」 《ううう……》