どうかしてる。

こんなこと言うなんて。

もう、わけわかんない。

何がどうなって、こんな話になったのか。

わかんないよ。

なんでケンカになっちゃったの?

あたしは、ちゃんと話がしたかっただけだもん。


だけど原因はあたしにあったのかもしれない。


宮坂さんが現れて。

正直焦ってしまった。

宮坂さんは、あたしより郁君の事を知ってて。

あたしより郁君の事を考えてる気がして。

あたしより郁君の側が似合う気がして。

郁君を取られちゃうんじゃないかって。


不安で押しつぶされそうになったんだ。



次の日の朝、あたしの目に映った。

郁君と宮坂さんの姿。


え……何で?


郁君の腕には、宮坂さんの腕が絡みついていて。

それを見たあたしは、まるで時が止まったように固まってしまった。



昨日、
『もういいよ、宮坂さんとまた付き合ったらいいんだよっ』
なんて思ってもない事を口にした。


だから?

もう、宮坂さんに乗り換えちゃったの?

嘘、でしょう?


ポロッと涙が頬を伝った事で、ハッとした。

その瞬間、郁君があたしの方に気付いて。


目が合った。


大きく目を見開いた郁君に、数回横に顔を小さく振る。

そして、あたしはその場から走り出した。



どうして?
なんで?

いくら考えてもわからない。



息が切れるまで走ったあたしは、足がもつれて。


転んでしまった。



「……いっつ」



あまりの痛さに、両手でヒザを押さえた。

涙はポロポロ出てくるし。

ヒザは痛いし。


だけど胸はもっともっと痛い。