【完】TEARS−ティアーズ−



譲ってもらった“日替わり弁当”の食券を握り締め、カウンターへと取りに向かいながらもキョロキョロと辺りを見回す。

いないなぁー。
あっちの方に行ったんだけどなぁ。



「誰か探してるの?」



そう頭上から聞こえた声にふと顔をあげると。

天使君がそこに居て。



「えっ!? あ! 天使君!」

「え? 天使……?」

「あ、何でもないですっ!
えっと、さっきはありがとうっ!」



そう食券を振って見せた。



「いえいえ」



なんて優しく微笑む姿は天使そのもので。

本当なんて良い人なんだろう。


って、



「あれ?」



天使君の右手にある食券に、思わず声を漏らしてしまった。

だって、天使君が持ってるのは“日替わり弁当”の食券。



「“日替わり弁当”の食券、もう1枚あったんですか?」

「あー、これは郁(イク)がくれたの」



そう指差した先には、今朝の、さっきの、男の子だった。