「あ、ねぇ、郁君っ」 そう呼ばれてハッとした。 そういえば俺、乃亜の手引っ張ったまま歩いてたんだった。 振り返ると、そこには少し息を荒げた乃亜。 「あ、わりぃ」 そう言って手を離すと、 「あ……」 って、あからさまに寂しそうな表情を見せる。 あ、れ。 これって手離すタイミング間違った? 乃亜の顔を見れば、多分間違ったんだろうけど。 今更、繋ぎ直すタイミングなんてわかんねぇし。