【完】TEARS−ティアーズ−



「え? 俺?」



あ……。
やば。

そう思った時には既に遅くて。


食券を手に持った男の子は、あたしの方へと近付いてくる。



どどど、どうしようっ!

自分で言った(叫んだ)ものの、こんな状況になるなんて思ってもみなかった。



「食券欲しかったの?」



目の前で立ち止まった男の子から目を逸らすと、あたしは一応コクコクと首を縦に振った。


『なんだよ、お前』
とか言われちゃうのかな?


そりゃそうだよね。

この男の子はちゃんと並んで食券買ったんだもん。

文句なんて言われる筋合いなんてないんだもん。


肩に力を入れたあたしが、何て言われるかビクビクしていたら。



「そっか。なら、どうぞ」

「へ!?」



なんて想像していたあたしの耳に、思いも寄らない言葉が聞こえてきて。

あたしは素っ頓狂な声を出してしまった。