宮坂の事も、結局はそうだった。



『私と郁君、付き合ってるって噂になってるよ』

スライディングに失敗した俺の足を手当てしながら、そう言ったのは宮坂。


俺はあまり女と喋らない。


朝は朝練があるから教室に入るのはギリギリで。

休み時間はほとんど寝てるし。

昼飯の時は正宗達と一緒。

放課後はすぐに部活へと向かう。


まぁ喋る機会すらねぇんだけど。


だから唯一喋る女っていえば、サッカー部のマネージャーの宮坂くらい。


そんくらいの事で噂にするとか、くだらねぇ。ほっとけばいいや。
それくらいに思っていたら、どんどん周りが煩くなってきて。

もちろん1番煩かったのは正宗。

あいつは本当に迷惑な奴だ。


そしたら、宮坂が

『付き合ってるって噂、本当にしてあげてもいいよ?』

なんて言い出して来たんだ。


初めは、そんな面倒な事するわけねぇ。って思ってたんだけど。


正宗があまりにも煩く言うから。

『郁は来る者拒みすぎなんだってば!
恋をわからないのは、ちゃんと付き合った事がないからだよ!
恋はいいよ~♪』

って。


だから誰かと付き合えば、彼女が出来た! って喜んでる奴等の気持ちが少しはわかるかなぁって、そう思ったのは事実。

それでも宮坂と付き合う気にはなれかったんだけど。


どこでどうなったのか、
誰が宮坂に言ったのか、


『今、しつこく告白してくる男の子がいて正直困ってたんだよね。
郁君と付き合ってるって言ったら諦めてくれると思うし。
いいよ、郁君と付き合ってあげてもいいよ』


なんて宮坂が言った次の日には、宮坂は俺の彼女になっていたんだ。