銀河の流星

ただ壁をよじ登る。

フリークライミングはそんな底の浅いものではない。

登り始めのルート選択を失敗すれば登頂すら出来ない事もある、知識と経験も求められるスポーツなのだ。

その点、星乃はまだ若いながらも経験豊富だった。

巧みな手捌き足運びで的確にルート選択し、あっという間に数十メートルを登り詰めていく。

顔を上げれば、もう頂上は視界に捉えられる距離。

ポニーテールを揺らし、頬を伝う汗を拭いもせず。

腰のベルトにぶら下げた滑り止めの粉の袋に手を突っ込んだ後、星乃は再度手を伸ばす。

ゴールが見えてきても油断はしない。

断崖上部に吹き付ける風を感じながら、腕の力だけで大きく肢体を持ち上げる。