文末には驚くべきことが書かれていた。
だがそれにはきっと喜びも含まれている。



-愛しく思えるヒトと巡り逢うことができました。可純という名です。迷惑をかけてしまった二人にはきちんと彼女を紹介したいのですが、写真だけになってしまいました。近々彼女と式を挙げる予定です。


「……悠沙くん」

封筒には写真が入っていた。

海の近くの喫茶店で撮ったのだろう。ひょっとしたら彼の店かもしれない。

大きな窓に映るのはきらきらと輝いた群青色の海。それを挟む二人の男女。

横顔だけで分かる。
前見た時よりも随分大人っぽくなった彼は一段と美しく、視線の先の彼女をいとしそうに見つめながら笑っている。


彼女は深島が想像したようなヒトではなかった。

睫毛を伏せながら静かに笑ってる女性。
独自の空気を持ってるヒトだ。

少し色素の薄い髪を肩に流し、細く白い指には指輪がはめられている。


すごく美人、というわけではなかった。
端正なのは間違いないのだが、葛城と比べるならそれも大したものではなかった。



でも、そんなこと、深島はどうでもよかった。

可純と葛城を繋ぐ愛を感じられたことが、ただ嬉しかった。


よくよく見ると写真の下に「KenZi」と書かれている。

さては盗み撮りだな、深島は確信を持ちながらおかしくて笑った。

カメラ嫌いな彼がこんな幸せそうに、飛び切りの笑顔を見せる訳がない。
そこで彼の親友の健司が撮った写真を無理矢理渡した訳か。
本来ならば写真すら入っていなかったのかもしれない、深島は写真を撮ってくれた健司に感謝した。



結婚式に招待されなかったのは悲しかったが、一刻も早くこの嬉しい報せを愛する妻に教えたくて、深島は家の鍵を開けた。