葛城から手紙が届いたのは、息子が産まれてから五年がたってからだった。


その日は朝から月帆の体調がすぐれなく休んでいたので、ポストを覗いたのが深島だった。
白い封筒の裏にはきれいな字で葛城悠沙と書かれていて、住所は書いていなかった。

家に入る前に焦る気持ちを抱きながらも封を開けた。始めてみる文面を見ても中々葛城の見目麗しい顔を思い出せなかった。彼とは随分会っていなかったのだ。


手紙の内容は、酷く淡白なものだった。それに少し苛立ったが、罪悪感があるのだと解っているからどうしようもなかった。


だが、深島は文を読むにつれ涙が出そうになった。

彼はまだ救われていない、救われようとしていない…

月帆に聞いた話に激しい怒りを感じたのは確かだが、深島の持つ怒りは葛城に初めて会った日に消えてしまっていた。




葛城と月帆はあまり似ていない兄弟だった。彼女はとても可愛いヒトなのだけれど、葛城とはどこか違っていた。青と赤。白と黒、それみたく交わることのない容姿だった。

彼は月帆のさらにその上をゆく見目麗しい青年だった。格好良い人よりも二歩三歩かけ離れた、そんな青年だ。


月帆が出会ったばかりのころ教えてくれた。葛城の美貌は父親似らしい。そして彼女は母親似。そう教えてくれた時、哀しそうに瞳を曇らせていた理由を、彼はもう知っている。