海と微熱の狭間で

それは、あんまりにも嬉しくない事実だった。
可純は皮肉に歪んでいる原野の瞳を見つめながら、言葉を失っているのだ。



同性愛。それを軽蔑してるからではない。
可純の思想に、同性愛は反していなかった。


可純は自分が解らなくなる。
言葉を失っているのは一体何故だ?
ここで黙ってしまったら、原野が傷付くのに。


例えアダムとイブが、神エホバによって創られた人間だとしても。愛を共有するのを男女に固定しても。可純は悪いことだと思わない。

アダムやイブ、ましてや自分たちなど神の性教育にすぎないのだから。


…そういうべきなのに、そう思っているのに。
今の現状に混乱しているのかもしれない。

大好きな、大事な…いとおしい友人に嫌いという言葉を聞かされたからかもしれない。


「…ごめん」
謝るつもりなどなかった。
原野が悲しそうな顔をするのは解っていたから。


「なんで謝んの」

ああ、以前もあった。
こんな会話。

原野は、以前と同じくらい哀しそうだ。