海と微熱の狭間で

家の門が開いたと同時に、可純はドスン、と大きい衝撃を受けた。

思わずよろめく。


「かすみーっ!会いたかった~」
甚が頬擦りしてきたので、可純は鬱陶しくなる。

「大袈裟なんだよお父さんはぁ」

引き離すと、甚の若々しい笑みが見えた。

「恥かしがり屋だなぁ。若い頃のあおいにそっくりだ!」

甚はラベンダーをあおいと呼ぶ。
勿論、原野や葛城も。

「あおいさんは今も若いですよ」
葛城が穏やかな表情を浮かべながら言った。
「お久し振りです」
甚がにっと笑った。

「おう!悠沙てっめー俺の可愛い娘を奪いやがって~」

葛城が苦笑して「すみません」と言った。
ちっともすみません、とは思って無い口調だった。

「お、健司は?」
「健司は直に来ますよ。駐車してます」

葛城はなかなか離さない甚から可純を引き剥がした。

「てめ」

葛城が美しく笑うと可純を抱き締めた。

「可純は俺のなんで。甚さんはあおいさんと仲良くしといてください」

甚が豪快に笑った。

『男の嫉妬は恥ずかしいぜ?』

甚の流暢な英語に葛城は微笑み返した。

『それはどうも』

皮肉な掛け合いは二人とも好きだった。