その夜、二人はベッドの上で雑誌を読んだ。
女性用の雑誌なのだが、葛城はあまり気にならないらしく結構楽しんでいるようだ。


「なあこれ、可純似合うんじゃないか?」
「んー」
あまり乗り気ではないが、指の先を見る。


ベージュのだぼっとしたセーターでリボンが控え目につけられている。これと重ね着にしたら絶対可愛い!と薄い茶色と赤のチェックの折り曲げたらワイシャツのようになるとっくり型の上着を再び指差し断言した。

確かに可愛いが、可純はあまり興味なかった。

それならもうすぐ出る小説の新刊や前から買おうか迷っていたシリーズ小説を買いたい。
「あ、ここイギリスに店あるじゃん。帰ったら行こっか?」

イギリスに?
可純は訝しげに写真の下に書いてある値段を見る。

とんでもない金額に可純は思い切り眉をしかめた。

社長であるからか、金に糸目は付けない葛城に呆れてしまう。

「…葛城くーん、私あんまりお洒落に興味ないんだけど」
どっちかというとシンプルで着やすいのが好き、そう言うと葛城が拗ねたような顔をした。
「何でだよー可純可愛いんだから勿体ないだろ?」
葛城は当然のようにそう言う。
葛城は自分の好きなものにはかなりの贔屓目をすると、可純は溜め息吐きそうになってしまった。

「はいはい、私は可愛いからお洒落しなくても大丈夫なんですー」
おどけて交わすと可純は雑誌の頁を十頁ぐらいまとめて捲った。

「おいまて、まだ見てるんだけど!」
「はいはいはい」

軽く受け流す。可純は雑誌に載ってる好きな小説作家のインタビューが目的だった。


「…色気ねーなぁ」
葛城は苦笑を混ぜて言った。

「私が色気むんむんだったら困るんじゃないの。式挙げる前から浮気しまくりー?」


葛城が本気でムッとした顔になった。

「俺がテレビで報道されたくないんなら浮気するなよ」

可純がにっと笑う。

「ほら、やっぱり色気ない方がいいでしょ。それとも冷めちゃう?」

葛城があまりにも優しく笑うから可純はドキリとした。


「可純なら何でもいい」


そう言って贈られた小さなキスは、とびきりの愛情が込められていた。