小さめのグラスに水を入れ、椿の茎を鋏で切るとそれをいれた。


「…悠沙はどうなってるのかしら」
嫌になるぐらい美しい彼は今も美しいのかしら。

深島は微かに笑った。

「写真、見るかい?」
月帆はえっ、と声をあげた。


「あ、あるの?」
「うん、相手の女性も写ってるよ」

月帆はもう、涙を流してはいない。

あの頃のか弱い雰囲気を捨てた、毅然とした女性になっている。

「見たい!もう、真冶さん早く教えてくれればいいのに」

「ごめんごめん、ほら」
封筒から写真を取り出し月帆に見せる。

月帆は嬉しそうに頬を赤らめて見つめている。

「綺麗なヒトね…悠沙も相変わらず…」

深島は微笑む。

「何故ここまで綺麗なんだろうね。可純さんも大変だ」

月帆が首を傾げた。
「可純さん?」
「ああ、悠沙くんの結婚相手だよ」

深島は名前いい忘れてしまったからか恥ずかしそうに肩を竦めた。
「綺麗な名前!彼女ぴったり」
会いたいな、と月帆は言った。
深島は笑顔で同感した。

数分前に会ってました、とは言えない空気だった。




「それ、私も読んでいいの?」
月帆が封筒を指差した。
「うん、勿論だよ。でも明日にしたらどうかな。月帆調子悪いだろ」

「あら、もうすっかりいいのよ。ただの貧血だもの…でもそうね、明日にするわ」

月帆はにっこり微笑んだ。

そして写真を飽きずに見つめ直した。


「…悠沙ほんとに良い顔してるねぇ。写真嫌いなのに、よくこんな綺麗な表情…」

深島がニヤリと右の口角を上げた。

「可純さんの存在も理由だろうけど…健司くん、知ってるだろ」
「悠沙の親友でしょ」
もうすっかり会ってないけど。
切なそうに言う月帆に深島は罪悪感いっぱいになってしまう。