抹茶のアイスクリームがのったあんみつが目の前に置かれて可純はふにゃふにゃにほっぺたを緩ました。


「でも丘生ちゃんは喜んでたに違いないよ!」
ちらちら葛城から視線を外し、素敵なデザートを見る。
葛城が呆れながら笑う。

「無理に話そうとしなくていいよ。食べたいんだろ、ほらアイスとけちゃうぞ」

「うん」


可純は一口口に含む。

「ん~~」
もだえるように震えてみせる可純に葛城は微笑んだ。

「美味い?」
「すっごく!」

可純は普段大人びているが、こんなときとても幼い。

葛城は慈しむような瞳で可純を眺めた。



「…俺さ、可純」
可純はあんみつに夢中で生返事を返した。


葛城は微笑む。

「…二人のせいで救われてしまいそうだよ」
甘い。
可純は唇の端に付いた黒蜜を舐めた。

可純はあんみつから視線をゆっくりあげる。


「…いや?」
葛城は首を横に振った。
だが彼は矛盾を見せた。
「…いや、なんだろうね」



本音が見えたことを可純は言わない。

いやじゃないから苦しいんだ

可純は見目麗しい彼を見つめた。
葛城はひっそりとまた、煙草に火をつけた。



「明日はいっぱいゴロゴロしようね」
可純は本を買いに行こうと本屋の名前を出した。

「今日もいっぱいゴロゴロしたじゃないか」
「もっとするの!ね。縁側でオセロしようよ、今度こそ勝つんだから」

葛城は嬉しそうにそうだな、と言った。
可純の大きな純和風の家が二人には鮮明に思い出された。

「で、お父さん達とハイテンションの鍋大会を開いたり…」
「それもいいね」
「眠くなったらコタツでお昼寝して…」
「風邪ひいちゃうだろ」

肩をおどけるように竦めてみせる。
「そんな注意も、お母さんから受けたり、ね」
葛城はやはり美しい、可純にしか見せない笑みを浮かべた。


「…楽しいことばっかだな」

そうだね。
そうなんだよ。

可純はアイスを掬い、葛城の口に運んだ。
甘苦いそれに、頬を緩める葛城を、可純はいとしくおもった。