深島は二人が去った後家に入った。

月帆が柔らかな笑みを浮かべながら出迎えてくれた。


「おかえりなさい。今日は少し遅かったのね?」

深島は朝海と顔を見合わせてどこか似た笑顔を彼女に向けた。


「素敵な同士と玄関口でお話してたんだ」


深島は最後、二人に葛城への伝言を頼んだ。
それは、葛城に伝えられないかもしれないと深島は解っていた。

葛城を大事に大事に思っている二人だ。
彼の再生をややこしくするかもしれない伝言を、伝えるわけがない。

これは、ただ深島が言いたかっただけのことだ。
だから、それならそれでもいい。



救われたくないと思う必要はもうないのだと。
自分自身が思っていれば、いいだけの話なのだから。