深島は胸の中にあった何かがすっと消えていくような気分になった。

最後にあったのは随分と前だ。
数年でだいぶと大人っぽくなるものだと感心した。


「え、健司くん?うわー大人っぽくなったなぁ」

心底嬉しそうな深島の笑顔に、原野は少し恥じらいを見せた。


「えっと…あの」
原野が口ごもる。
深島はあっ、と声を漏らした。絶えず微笑を浮かべている。


「写真、ありがとう」
深島は二人を塀の向こうに促した。


今度は原野がえっ、と声をあげた。

「あ、可純さん…でいいかな?」
可純が快く頷いた。
深島は先を続ける。

「ほら、この手紙に入ってたんだよ。可純さんと悠沙くんが写ってる…」

葛城の名前が書かれた封筒を見せた。
可純は黙っている。

原野は首を傾げた。

「すみません、見せてもらっても良いですか?」

「うん」

渡すとき、微かに原野の指先に触れた。
ひんやりと冷たい。
その表情の下には、大きな緊張が隠されているのだろうかと深島は考える。


「あ」
原野は苦虫潰したように不愉快な顔をした。
可純も写真を横から覗き見て眉を思い切りしかめている。
可純の場合、矛先は原野のようだ。


「あいつ何勝手に…「原野くん」

「え」
ビクリと原野の肩が震えた。

可純の酷く冷淡な声に深島は噴き出しそうになる。


「…これ隠し撮り、よね」


二人がテンポ良い口論をしてるのを見て深島はまだまだ若いなあと悠長にも思っていた。