「…あの、すみません」

深島が玄関に入ろうとした時、後ろから声をかけられた。

冷ややかな、静かな女性の声だった。


後ろに振り返ると、どこか見覚えのある女性がいた。
横には男性もいるが、深島はその男性に違和感を覚えた。



「どちらさまでしょう?」

微笑みながら尋ねると女性も控え目に微笑んでくれた。


なかなか端整な顔立ちをしてる女性に、深島は気付いた。


「初めまして。悠沙さんの婚約者で、市瀬可純と申します」

深島は息を飲んだ。
前は思い出せなかった見目麗しい葛城を鮮やかに思い出した。



女性が側にいる男性の腕を引いた。
男性は堅い表情をしていて、酷く緊張しているようだった。


「…悠沙の、親友の原野健司です」