葛城が可純にプロポーズをしたのは、一ヵ月ほど前のことだった。




仕事が忙しかったその頃、徹夜で仕事を片付けた可純は朝帰りした。

だが忙しいのは今日までで、明日明後日と休みを貰えたので彼女はふらふらしながらも気分は浮きだっていた。

「ただいまぁ」
二人はロンドンの小さなアパートで住んでいるのだが、事実すごく狭い。

元々葛城の住んでいたアパートに可純が越してきたのだ、無理もないと解っていた。


葛城は引越そうかと、可純の会社の近くの物件を持って帰ってくれたのだが、可純別にここでもよかった。

狭いのは確かだが、葛城とならそれも居心地が良いものだと思っていたのだ。


部屋は静かだった。やっと朝日が窓から入って来た時刻なのだ。彼はまだベッドの中だろう。


少し大きめなベッドへ静かに近付く。

すやすやと眠っている彼にどうしようもない気持ちを抱いてしまい、彼の体温が恋しくなった。

こっそり布団に潜り込むと、彼に胸に頬を寄せた。

葛城の鼓動と寝息に眠気を誘われたのは言うまでもない。


彼女はゆるやかな世界に浸った。