二人が去ったあとの病室は、いつもの静けさに戻っていた。

さっき戻ってきたおっちゃんは、いつもよりどこか元気がないような気がする。



・・・



いつもはよく話しかけてくるおっちゃんが今日は全くと言っていいほど話さないので、病室は異様なほどの静けさに包まれ、この静けさのなかではあまりにもすることがない。



ベッドから立ち上がってみる。

少しぎこちないが調子は良さそうだし、ちょっと病院内を散歩でもしよう。


「にいちゃん、どこに行くんだ?」


ヒメたちが病室から出ていってから初めて口を開いた。


「ちょっと散歩にでも行こうと思って」


「・・・

そうか」


やはりいつもと違う。

表情もどこか暗い顔だし、何よりもこんなに静かだなんて、この病室に入ってから初めてのことだ。

まあ、もう少しで昼飯の時間だ。

飯でも食べて、少し昼寝でもすれば元通りになるだろう。



太陽の日差しが廊下に差し込んでいて、映画にでも出てくるような風景になっていた。

そこを歩いていく俺って、ちょっと格好いいだろう・・・・・



勘違いしないでほしい。

俺は決してナルシストではない。



このまま、屋上にでも上がって風にでも当たりたいが、そこは映画などではなく、病院の屋上に出られるわけがない。

この格好のまま病院を出て、近くのコンビニにでも行こうかと思ったが、見つかったらかなり怒られるだろうし、この格好を通行人にあまり見られたくない。

それに、もしアレがきたらと思うと、それこそ見られたくない。