君を忘れない

この二人を見ていると、本当に大学から知り合ったのかと思うくらい仲がいい。

きっと、幼馴染と言われても納得してしまうだろう。


「やべっ。

わりぃ、今日はもう一箇所行きたいところがあるから、もう行くわ」


時計の針がもう少しで十一時になりそうというところを指していた。

少し早い気もするが、俺がもう少しいろよと言うのも図々しいか。





「おっ、色黒のねえちゃん。

今日も来てくれたのか」


同じ病室の患者が一人戻ってきて、いつもならここから騒がしくなっていき、看護師さんにみんなで怒られる。

そのパターンになりがちだったので、ヒメが帰るにはちょうどいいタイミングなのかもしれない。


「好きで色黒くなってるわけじゃないよ。

それに、ねえちゃんじゃなくてにいちゃん」


人懐っこい笑顔で答える。

この、ヒメの誰に対してもいつも笑顔で知らない人でもすぐに打ち解けてしまうところが羨ましい。


「悪い、悪い、許してくれやねえちゃん」


しかし、この患者はヒメのことを女だと未だに本気で思っているから厄介だ。


「ヒメ、ありがとな。

また、長くなると看護師さんに怒られるから行っていいよ」


本当はもうちょっといてほしいのだが、あいつの時間を邪魔するのも悪い。


「待った。

俺はまだねえちゃんと話があるんだよ」


「ないない、俺はない。

それじゃな、ハマ。

また来るわ。

おっちゃんもまたな」


そう言うと、ヒメと藤田は病室を出ていった。

一時間も病室にいなかったが、何時間もいたような感じだ。



仲がいい二人だけど、付き合っているとかそういう話はないのだろうか。



ヒメの性格からすると、まだあの子のことで自分を許せないと思っていそうだから、それはないか。



けど、二人が付き合っているかどうかは別として、そろそろ許してもいいんじゃないか。