「で、何しに来たの?」


「いや、お見舞いですけども」


「そんな暇あったら勉強しろよ」


「わざわざ、お見舞いに来たのにお母さんみたいなこと言わないで」


「だって、お前がここに来る理由は、ほどよい冷房を長時間堪能してもお金がかからないからだろ?」


「おいおい、俺は小学生かよ。

っていうか、それなら学校の図書館に行くわ。

電車代もかかってるっつうの」


「それもそうか。

じゃあ、その手に持っているお見舞いの品だけ頂くから、今日はご苦労さん」


「おいー」


いつもこうだ。

こいつと話すと、完全にペースを握られてしまい、何かとこういう会話になってしまうことが多い。

大勢でいると、会話というよりは漫才みたいになってしまい、更に会話がおかしくなってしまう。

こんな調子だから、病室に他の患者がいると大笑いになってしまうので、看護師さんからの説教が絶えないのだ。


「いや、本当に相変わらずの名コンビだね。

知多さん、調子いいんじゃないの?」


「俺の調子のバロメーターは笑いかよ」


「いやいや、本当に今日は調子いいよ。

寝癖が左側についているときのハマは本当に調子がいい」


こらこら。

折角、藤田がちょっと真面目になりそうな話題を振ったのに・・・

いや、今のは俺が悪いのか。

まったく、相変わらず面白い奴だ。

さっきまで静かで暗い雰囲気の病室が、一気に明るく騒がしくなった。