「どうも、ありがとうございましたー」


かれこれ、十曲くらいやっただろうか。

あまりにも熱中してやっていたため、二人とも息が上がっている。

これで俺の大学生活にまた一つ馬鹿な思い出が一つできた。


「どうだった?」


幽霊の反応が分かるのは一人しかいない。

二人揃って店長の顔を見る。


「いや、最初は怒ってた・・・

けど・・・

その怒りが無くなった」


信じられない。

幽霊は俺たちのライブを見て笑ってくれていたのだ。

都合のいい話だが、こういうことになると霊感があって幽霊が見えたらなって思ってしまう。

そうすれば、みんなが笑っている姿が見えたのに・・・


「マジで!

俺たち凄いじゃん」


「ありがとうございます!

ありがとうございます!」


俺たちは見えない姿に向かって頭を下げてお礼を言った。


「いや、違うよ」


二人で盛り上がっているところに、申し訳なさそうに店長が入ってきた。



違う?



どういうことだ?


「お前ら、呆れられているぞ。

幽霊に呆れられているぞ。

『お前たち早く帰れ』って、言っているぞ」


そういうことか。

そんなことを言われると、急に恥ずかしくなってきた。



不思議と帰り道は全く怖さというものはなかった。

笑わせることはできなかったが、俺たちは幽霊から怒りを取り払ったのだ。

うん。

今度、他の奴らに会ったら、自慢してやろうじゃないか。