「…なぁ、お前」
ムス、と唇をへの字に曲げ、少女に顔をずいっと近付ける。
「本当に俺のこと、知らないのか?」
「…っ」
(ち、近いですぅうっ!)
ひぃいい!と雄叫びを上げそうになる円香だが、それをなんとか押さえる。ひくりと顔が引きつりながら、一歩後退った。
後ろから何故か、物凄いオーラを感じるのだが、気のせいだろうか。
否、それは決して気のせいではない。
その原因であるマキは、円香に近寄るなこのゲス野郎…、と何やらブツブツとお経の様に呟いていた。
それを知るはずもない彼女は、とにかく必死に首を振る。
「し、知りませんよ!」
そう口にすると、本当なのか、と何故かショックを受ける男。


