「違う」

「へ?」


戸惑いを浮かべる円香に、仏頂面をしたまま男は呟く。


「…俺が聞いてんのは名字じゃねぇよ。名前だ」

「あ…、円香…です」


また俯き、怖くて顔を上げられないまま答えると、クイッと顎を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる。

目の前には、金髪男。


太陽に照らされる黄金色をした髪が、風に誘われてさわさわと揺れ動く。


(……綺麗な人)


相手は不良なはずなのに、不覚にも見惚れてしまう。

闇を映す瞳は深く深く、何処までも吸い込まれて、気を抜いたら一気に堕ちていきそうになる。