ついた先は、高校の中庭だった。

円香は興味津々といった様子で辺りをキョロキョロする。

だが、特別何かがあるわけでもなかった。

周りは青々した木々が空を覆い被さるように生え、地面は芝生。

そしてそれだけではなく、柔らかな暖かい春の訪れを感じさせる桜が、木々の合間にいくつか生えていた。

ひらひらと、緩やかに滑り落ちる花弁に目を細める。

たまに吹く冷たい風が頬を撫で、それが心地いい。

夏は木陰で休めそうだと、呑気なことを考えていた。