だけど、これは届かない



『お疲れ様です』


耳に届いた聞き慣れない声。

若い先生。あんまり見たことない人だった。

私がよく絡むのは奥の机で作業を続けている塾長先生で、今日もこうして私は長話をしている。


格好いいと思ったんじゃない。

私の興味は何に向いたのかわからないけど、私は現れたばかりの先生を凝視していた。

すると必然的に目が合う。

「こんにちは」

「…こんにちは」

目を反らす。

実質1秒にも満たない目が合っていた時間が、それより遥かに長く感じた。