その日の夕方、文香は、保健室にいた。


「中村先生のお母さん、心労で病院に入院したみたいよ。」

「そうなんだ。」

「良太君の方はどうなの?意識が戻って、だいぶ経つわね。」

「うん、前より、すごく、回復したみたい。でも・・・学校が終わって病室に行くとい

つも理恵がいて、良太に会わせてくれないんだ。」

「・・・つらいね。」

「うん。でもがんばるよ。」

「それでこそ、文香ちゃんだね。」


麻美ちゃんはいつも励ましてくれていた。幸治がつかまって、自分もつらそうだったけ

ど 、そんな顔みせずに、笑いかけてくれていた。そんな麻美ちゃんを見ると自分もが

んばろうって思う。



学校が終わっていつものように病院に行くと、文香は、良太の病室が見える、中庭のベ

ンチに腰掛けた。ここが、文香のいつもの場所。窓から、良太の横顔が少し見える。良

太はベットの机に向かっていて、多分、勉強しているようだった。私、ストーカーみた

いだよね。でも、ここでしか貴方の事、見ること出来ないから。。。

いつも近くに居た人が、今はこんなに遠くなってしまった。。。





良太の意識が戻ったのは、病院に運び込まれてから、二日後のことだった。文香が病院

に駆けつけると、理恵が病室から出てきた。


「理恵、良太意識がもどったの??」

「・・・!?よく、ここに来れたわね。文香。」

「えっ?」

「だれのせいで良太はこんな目にあってると思ってるんだよ。」

「・・・」

「良太も、こんなことになって、文香のこと恨んでた。もう帰ってよ!絶対、良太には

会わせない。」



理恵に圧倒されて、文香は病室に入れなかったのだ。