情けない様な表情を見せながら先生は言った。


「ある日、前に住んでたアパートに、幸治がその女を連れてきたんだ。年上だったけ

ど、とても、きれいな人だった。僕は一目でその人を好きになってしまったんだ。その

女が求めるまま、その日、初めてその人と寝た。それから、夢中になってしまって

ね。。。何度も何度も抱き合った。結婚を申し込んだ時は、すぐOKしてくれたんだ。

次の日には、今のマンションまで買って。。。夢を見ているみたいだったよ。それが、

幸治の母親だと分かるまではね。。。」



(え??幸治の母親ってあの携帯の写真の人・・・)



「マンションに遊びに来ていた、その女が携帯で幸治と話しているのを聞いてわかった

んだ。その翌日から、マンションに幸治がころがり込んできた。へらへら笑いながらね

―・・・

父親が浮気をした相手と関係を持った事を僕の母にバラすと言ってきたんだ。母は父と

離婚してから精神が不安定だったから、その上、そんな事を、聞かせるわけには、いか

なかった。


それから、僕の地獄がはじまったんだ。幸治のいう事は何でも聞いたよ。良太君の事も


本当は殴りたくなんかなかった。でも横に幸治が、いて。。。」



先生はかわいそうなほど、疲れた顔をした。


「でもすべてを幸治のせいにする訳にはいかないんだ。僕が幸治のために足を不自由に


してから、僕の母さんは幼い幸治に虐待をはじめた。僕はそれを止められなかったのだ


からね。。。」






良太は何の犠牲になったのだろう・・・この人たちの??私の???

すべてが重なって、良太の上にかぶさったようだった。




本当はわたし、ここへ来て、先生を殴りたかった。

私が一番幸せを願う人の、視力を奪った代償をはらってほしかったんだ。


でも一番許されないのは自分自身だった。。。


私は一番幸せを願っていたはずの人を傷つけた。それは親友ではない。それ以上

の存在だったと今頃、気づいたの。。。


私はずっと良太を愛してたんだ。




その3日後、行方不明になっていた。中村幸治がつかまった。