「――い」 「えっ、何?」 そんな人じゃないよ・・・ そう言ったつもりだったけれど、うまく声に出来ていなかったらしい。 「奈緒、ほんとに大丈夫?」 「うん・・・。」 「じゃあもう教室に行こうか。」 絢は明らかに奈緒の様子がおかしいと分かっていたけれど、その場で深く追求することはなかった。 奈緒が一度何かを考え始めると、しばらく自分の中にこもってしまうことを、絢はよく理解してくれているのだった。