君と桜と




「り、隆司・・!」





奈緒は、校舎の前の通路に出て立ち止まった。





息がきれて小さな声しか出なかったけれど、隆司にはちゃんと聞こえたようだ。


なんだか最近、走ってばかりな気がする。






「おう。」




奈緒がこんなに必死になって駆けつけたというのに。


走ってきたのがバカだったのでは、と思ってしまうほど隆司はマイペースで。

いつもと変わらない様子で歩いてくる。



一歩、また一歩。



表情が見えるくらいに、二人の距離は縮まっていく。


会いたくて仕方がなかった人が、手の届く距離にいるのだ。