君と桜と



「・・・なんか、ごめんね。

その、授業をサボらせちゃったよね。」


奈織が言いづらそうにそう告げると、隆司はきょとんとした顔をしていた。
一瞬遅れてフッと涼しげに笑ってみせる。



「いいよ。どうせ聞く気ないし。」



「あ~あ!いまの頭いいアピールでしょ!もうやんなっちゃう。」



ぷい、と膨れる奈緒。



「そこ、怒るとこじゃないだろ。」



そんな奈緒の様子にも動じず、相変わらず冷静な返事をする隆司。



「そうかもしれないけど~!!」



「まあ、奈緒が元気なら、それでいい。」



いつもの調子で騒ぎ始めた奈緒を見て、隆司は優しく笑った。


湿気を含んで少し冷たい風が、奈緒の髪をいたづらに揺らしていく。