「このパンフレットを渡すと、真っ先にお前の写真を指差す人が、結構な割合でいるんだ。」
「ちょっと、そ、それは何かの見間違いじゃ・・・」
折角気分転換に来たのに、これではまた緊張してしまうではないか。
自分で坂城くんのことを話し始めたのが悪いのだけれど。
「やっぱり、緊張してたのか。」
奈緒が急に落ち着かなそうな素振りを見せたのに対し、隆司はなんでも見透かすような視線を向けていた。
「だ、だって、監督さんも隆司もヘンなこと言うから・・・」
こうしているあいだも開演の時刻は刻一刻と迫っている。
奈緒はもうダメ、とよろよろ階段に腰をおろす。
「まったく。お行儀の悪いお姫様だな。」
衣装のまま階段に座っているところを監督さんに見られたりしたら、物凄い剣幕で叱られるのは間違いない。
「隆司、代わりに出てよお。」
とにかくどうしたらこの緊張を止められるのか。
中ばパニックのようになってしまって、気づけば訳のわからないお願いをしていた。
「お前、バカかよ。」
隆司はフッと笑って的確すぎるツッコミを入れた。


