稟の手を引き玲は

どんどん歩いて行く。

「玲。手が痛いっ」

別に手は痛くなかったが

稟はこの沈黙の状態に

耐えられなかった。

玲が口を開かず無口なのは

いつもの事だったが、

あんなに怒る玲を見たのは

幼馴染みの稟も初めてだった。

暫くして中庭に出ると

前を行く玲の足が止まると

手を放しその場にしゃがんだ。

「わ!?どうしたんだ、玲!
何処か痛いのか?」

驚いた稟が玲に話しかけた。

「・・・・・にやってるんだ・・・」

「え?」

「何やってるんだ、稟。

お前、打たれかけたんだぞ。

俺がいなかったら

どうするつもりだったんだ。」

玲がため息をついて、稟をみる。

「なんだ、そんなことか。」

とうの本人は、そう呟くと

玲のとなりに座った。

「そんなことって。

お前ならあれくらいの攻撃

直ぐに交わせただろう。

何故かわさない。」

その 玲の問いに

稟は首をかしげた。

「私が何故よけなかったか?

そんなの、玲がいたからに

決まっているだろ?」

その答えに驚いたのは玲だった。

「俺がいたから?」

「うん、玲なら私を

守ってくれるだろ?」

稟は美しく長い髪を揺らして

珍しい微笑みを浮かべてた。

まるで、幼子のように。

玲は瞬きを忘れ、

その稟に見とれたあと、

優しく微笑んだ。

「あぁ。」