バイクは大きな音を立て
私と彼を乗せ、走り出した

決してゴツいとは言えない
しなやかな彼の背中に
少し大袈裟にしがみついた。
私には、これが精一杯


「落ちんなよ、」

小さく彼は呟いたきり
前だけをひたすら見つめていた

その彼の姿を、
私はひたすら見つめていた


「梅沢先輩」

「ん?」

「ありがとうございます」

「何が」

「本当に私と仲良くしてくれて」

「仲良いか?みんな暇なだけだろ」

「あはは..」

「でもな、トク」

「はい?」


そのとき、
梅沢先輩が急に右手首をひねった
エンジンの回転が急に上がり
機械音がひどく耳に響いた。


「       」


「え...?聞こえないです」

「もう、言わない。」


彼はそれきり何も話さなかった。

エンジンの音にかき消された
彼の言葉は、何だったのか

いや
かき消されたのではない
わざと、かき消した言葉..