「…そっか」


類は優しく笑う。

その顔は何もかも分かっているような、そんな感じで。

ウソをついたことに少し、罪悪感を覚えた。



「…ねえ、類」


「ん?」


「私ね、誰とも付き合ったことないの」


「知ってる」


「だから今、類に言えることは何もない」


「なんだそれ」


ふっと笑う類。


「だけど、黙って一緒にいてあげることはできるよ」


私は立ち上がり類の横に立った。



「余計なお世話かもしれないけど、

でも私にはこれくらいのことしか類に何もしてあげられない」


なんだか急に自分の言ってることがすごく恥ずかしいようなことに思えて。

類の顔を見ることができなかった。



「これくらいのこと、じゃない」


「え?」


「ありがとな、奏」


類の大きな掌が頭の上にのった。

チラッと横顔を盗み見ると、

類はものすごく切ない顔で空を見上げていて。


そんな姿に少し、

ドキッとした。