どうしてだろう。

この勝手に溢れだす涙は、

どうして、流れて行くのだろう。


自分でも、分からなかった。

涙の理由が。


もしかしたら、

よーたくんが誰のものでもなくなった嬉し涙だったのかもしれない。


だとしたら私は、サイテーのオンナだ。

どうしようもないくらい、サイテーな。


だから自分で自分に

そうじゃない。そんなワケはない。

そう言い聞かせる。



「なんでお前が泣いてんだよ」


横から困ったようなよーたくんの声が聞こえる。

なんで、なんてむしろ私が聞きたい。


「辛いのは俺だっつーの」

その声はあまりに元気がなくて。

いつものよーたくんじゃないのは

顔を見なくても明らかで。



「スッキリした、爽快な気分。

それウソ、ですよね」


震える声でそう聞く。

そうすると


「うん、ウソ」

あっさりと認められる。


「教師が生徒にウソをつくなんてヒドイですね」

涙を拭い、よーたくんを睨む。


「ごめん。

ちょっと、強がってみた」


眉を下げ笑うよーたくんは、

やっぱりいつものよーたくんじゃなかった。