焼き肉は盛り上がり、

いろんなところで笑い声がたくさん聞こえて。


アルコールを飲んだワケじゃないのに、

みんな頬が火照ってテンションが高かった。


だから、きっとよーたくんも気が緩んでたんだ。



「そう言えば聞いたことなかったけど、よーたくんって彼女とかいるの?」


「あー…彼女、一応な

…ってうわっ!!俺、なんかサラッと言っちゃったし!」


自滅しといて慌てるよーたくん。

そんな姿を見てみんなは笑っていたけど。


私は驚きのあまり、笑うことも忘れていて。


どうしてだろう。

よーたくんだって大人のオトコだ。

彼女の一人や二人、いたっておかしくない。

なのに私は勝手にいないものだと思い込んで。


…そんなの、願望でしかないのに。



「ちょっ…マジこれ、内緒にしとけよ、お前ら。

信じてるからな」


「分かってるって」


幸い、よーたくんの周りにいた4、5人にしか聞こえておらずよーたくんはほっとした顔をしている。


「ねえねえ、よーたくん」


「ん?なんだ?碧」


「よーたくんさあ、一応いる、って言ったけど。

それってどういう意味?」


「どういう意味って?」


「フツーならさ、いるよ、ってそれだけ答えるじゃん。

一応、って意味深だよ」


聞きたいような、聞きたくないような、

『一応』の意味。

どうか、私にとっていい意味であってほしい。

そう願うのは勝手なことなのだろうか。



「ああ…その、なんつーか…彼女、桃子って言うんだけどさ。

アイツ…俺の他にオトコがいるかもしれないんだ」


よーたくんはそう言ったあと、

そんなことどうでもいい、みたいな顔でふっと笑っていたけど。

なんとなく、感じた。

よーたくん、辛いんだろうな…