「俺…奏のそばにずっと、いたいんだ」


しばらくの沈黙の後。

ゆっくりとテルくんは言った。



「俺といて、少しはアイツのこと、忘れられてた?」


「少しはアイツへの気持ちなくなった?」


立て続けに言ったテルくんのこの質問に私は何も答えられなかった。

だって、答えてしまったら。


それは今もまだ、よーたくんが好きだとテルくんに言うことになってしまうから。


…ウソをつけばいい?

そんなの、ダメだ。

正直に言ってくれてるテルくんに嘘なんてつけない。



「もし、少しでも忘れられてたなら。

もし、少しでも気持ちがなくなってたなら。


俺…まだ可能性がある、って信じたい。

もっとたくさんの時間を奏と共有すれば、

アイツのことを考える時間も減って行くだろうし、

アイツへの気持ちがなくなるまで、俺はいつまででも待てるから。


だから…」


私はテルくんと私を隔てていたドアを開けた。

タオル1枚体に巻き付けた状態で、テルくんに抱きついた。



「奏…」

テルくんの腕が背中に回る。



「だから、そんな悲しい顔、しないでほしい。

いつもみたいに、笑っていてほしい。


俺はそういう奏が…好きだから」