「そんな言葉、言わないでよ…っ!!

できなくても、忘れる、って私…決めたんだから」


1度、気持ちを落ち着けるために深呼吸をした。



「本当はずっと、分かってたよ。

先生が私のこと、生徒としか見てないこと。


だから、このキモチ、言わないでおこう、ってずっと思ってた。

だけどさ、今日で先生とサヨナラでしょ?


私、好きだって言わないと先生のこと、忘れられないって思った。

だから、言うことにしたんだ。


迷惑だった?」


「いや、全然」


「そっか。なら良かった」


本当は迷惑だと思ってくれたほうが、良かったんだよ。

だってそうすれば、よーたくんに覚えていてもらえるでしょ?



「告白…して良かった。

思わせぶりなこと、言われたけど。


だけど、良かった。」


私はやっぱり、可愛くない。

最後までウソをついて強がってる。


本当は告白なんてしなきゃ良かったと思ってる。

そうすれば、もしかしたら卒業しても
生徒と先生として仲良くできた可能性があったということに気がついたから。



「センセ、ありがとう。」


最後だから。

だから、とびきりの笑顔を見せた。



「…サヨナラ」

よーたくんに背を向けて歩き出す。



「奏ー!ありがとなー!!」


涙が止まらなくて。

角を曲がったところでうずくまった。


そうしてしばらくしていると、

肩に温かい手が添えられて。



「…奏」


顔を上げるとそこには碧が優しい顔でいて。



「帰ろっか」


何があったのかも聞かず、私の手をひいて2人で正門をくぐった。