「奏、ごめん。

お前の気持ちに…応えてやれなくて、ごめん。」


謝らないで、って言ったのに。

なのにどうしてごめん、なんて言うんだろう。


でもやっぱり、キライになんてなれなくて。

むしろ、好きという気持ちがこの瞬間にも増していく。



「好きっ!」


「…え?」


思わず、叫んだ。

そして制服の袖で涙を拭う。


「好きっ!

授業中の眠そうな顔も、
ウザイ絡み方も、
チョーク持つ手も、
イスに座るとすぐに足組むくせも、
思わせぶりなこと言うところも、

全部、全部、好きっ!!」


「かなで…」


「だから…っ!」


「え?」


「だから、今日で諦める。

もう、先生のこと、想うのやめる」


また涙が溢れた。

でもこれは決意の涙だから。

悲しいから泣いてるんじゃない。



「…だけど多分、できないと思う」


「そっか。

なら、ずっと俺のこと、想ってくれていいよ」



「…バカっ!!!」


そういうときはね、よーたくん。

普通なら


『お前は若いんだから、

俺なんかのこと忘れて前に進め』


っていうもんなんだよ。


なのに、


なのに、


どうしてそんな優しいこと言うの?