そんなこんなで迎えた、バレンタインデー。

お菓子会社の陰謀だと言われるこの日だが、なんだかんだみんな楽しんでいる気がする。


今日は休みに入っている3年生の出校日で久々に全員が揃う。

朝のホームルームのために教室入ると、匂った。


「おいおい。

朝からどんだけ甘いんだよ。

匂いだけで虫歯になりそうなんだけど」


チョコレート独特の甘い香りが教室中を漂っていた。


「あ、奏」

入ってすぐのところの席が奏で。

机の上にチョコがひろげられている。


無言で手を差し出す俺。

でも奏は知らないフリ。


「あのー…?奏さん?」


「…先生のバカ」


ええ!?

なんで急に俺、暴言吐かれてんの!?


「あれ?よーたくん、奏からもらえないの?」

そこへやってきた類。

その手にはうまそうな手作りチョコがあって。


「おい!それはまさか…っ!!」


「うん。奏からもらったやつ」


「くれっ!それを俺にくれっ!」


「ヤだよ。奏のうまいんだから、あげるワケないじゃん」


そう言って類はチョコを口に含む。


「うっまぁ~」


…なんてイヤミなヤツなんだろう。