「じゃあまず、補習を始める前に説教を」


「遠慮できますか」


「できないです」


はあ、と溜め息をつく奏。

奏、その溜め息は俺がつくほうが正しいと思うよ。



「どうして昨日、図書室に来なかったの?

呼び出したのはそっちからだろ?」


「……………………」


奏は何も言わない。

気まずそうに俺から目を逸らしている。



「俺、嬉しかったんだよ。

お前があんだけキライだキライだって言ってる英語に対してやる気出してくれたんだ、って思ってさ。」

なのに…


「なんで来なかったんだよ?

俺、ずっと待ってたのに」


図書室が閉まるのが6時。

ギリギリまで待ってたのに。


「奏が来てくれるって信じてたんだぞ」


「…ごめん、なさい」


「謝ってほしいワケじゃない。

俺は理由を聞いてるんだぞ」


つい、口調が厳しくなってしまう。

理由は自分でもよく分からなかった。



「…そんな感情的になるなよ、よーたくん」