「おはよう」
後ろのかわいらしい女の子が私に話しかけてきてくれた。
嬉しかった、けど・・・
こういうときは普通におはよう、と返すだけでいいのだろうか。
そんなことを考えていると後ろのかわいらしい女の子は
私の目をまっすぐ見てから目線を机に戻して、本を読み始めた。
今考えれば睨んでいたのかもしれない。

・・・失敗。


今のはなんと答えればよかったのだろう。
「ゆめかァ~」
語尾にハートマークがつきそうなほど可愛らしい声で呼ぶ女の子は
声よりも可愛かった。
「なァに?」
さっきのゆめかさんはゆめかさんの後ろの席の方を向いてしまって
話しかけることは出来なさそうだ。


もしかしたら、今のでおはよう、と言っていれば
友達が出来たのだろうか。


あ、隣の人たちや前の人たちにも
挨拶をしなければ
私は隣を見た。
一瞬息が止まる錯覚におそわれた。
いや、心臓が止まったかもしれない。

・・・とても綺麗な人だった。

ずっと見ていると隣の男の人がこっちを向いた。
これ以上にないくらいの最高のスマイルで
「俺健!君は?」
と元気に話しかけられた
「え!私ですか!?」
「そ。お前しかおらんやろ」
「えと・・・えっと・・・」

「はーい!静かに!!授業始めます!席に座って!」
先生がそう言ったので私は静かに
「・・・な、なつみです。」
と言った。
教室が静かになったからなのか
私の愛想のない返事からか
隣の健くんは黙ってしまった。

初めてお父さん以外の男の人と話したかもしれない。
初めてじゃなくても、もう何年ぶりで
まだ心臓がドキドキ言っている。

こんなに心臓がドキドキしてるのは
外を全力で走るのとは少し違う気がした。