「…めないわよ」

優太郎は呟いた。

「え?」

「諦めないわよ」

優太郎が何を言っているのか分からない私は、もう一度聞き返した。

「私、そんな事じゃ諦めないわよ!」

優太郎の声が、だんだんと力強くなっていく。

「デリヘルが何よ!そんな事じゃ、私はリッピーを諦めないわよッ!」

私は、優太郎を見つめた。

冗談なんかで言っていない。
軽い気持ちなんかでも言っていない。
そんなこと、優太郎の顔を見れば一目で分かる。

「でも私、汚れきってるから…」

私の言葉を遮るように、優太郎は言った。

「だから何ッ?汚れたって、私はそうは思わないわ」

「…汚れちゃってるよ」

「リッピーは汚れてなんかいないわよ!本当に汚れた人間ってのは、心が汚れきってるのよ!リッピーは違うわ!絶対に違うわッ!」

優太郎の力強い声。
力強い眼差し。
そして、澄んだ優しい心…。

今確信した。

私は、優太郎が好き…。

私がまた泣くと、優太郎はそっと私を抱きしめて、同じように泣いてくれた。




「ねぇリッピー?」


「なに?」


「私ね、人を好きにならなくなったって、この前話したじゃない?」


「うん」


「やっとね、人を好きになれたの。やっと、変われたの。全部、リッピーのお陰よ」


「私も、優太郎のお陰で、だいぶ変われたよ」


「じゃあリッピー、もう一度言うね」


「…うん」


「俺は、リッピーが好きだ」


「私も、優太郎が好き…」




『空へ』第4章−完−