「ねぇ、たまちゃん」

「…ん?」

「たまちゃんさ、さっき、目を覚ますちょっと前に、寝言みたいに死にたいって呟いたの…」

私は、誰かに殴られている時、死にたいと願った。
死ねば、晴貴の所に行ける。

「私、たまちゃんといつまでも友達だよ?」

「…うん、ありがとう」

「たまちゃんが死んだりしたらさ、多分、晴貴君は悲しむよ?またあの事故の犠牲者が増えることになるんだもん。…それに、私も晴貴君を恨んでしまう。だから、彼氏の為にもたまちゃんは生きなきゃダメだよ」

「あ…」

私は、そこまで考えていなかった。

そうだ。ヨッシーの言う通りだ。

私は死ぬ気だった。

だけどそれって、事故の死者を私自身が増やすことになるんだ…。

「ヨッシー。だけどさ、私、生きるの、辛いし…」

「その時は私がついてるよ!」

私は、今までこんな友達がいただろうか…。

親友の仇であるはずの、晴貴の彼女である私に、ここまで言ってくれる友達…。

世の中に失望していた、私の中の何かが変わった。

「ヨッシーありがとう」

私にも、こんな親友が出来たんだ。

よし、頑張って生きてみよう。

「ヨッシー、ありがとう」

私は、何度もそう思った。



「ゆう君達、入ってきなよ!」

ヨッシーがそう言うと、病室の扉が開いた。



『空へ』第2章 -完-