「俺の家さ、チョー貧乏なの、お前知ってる?」

「うん、知ってる」

晴貴はボロアパートに父親と二人で住んでいる。

母親は離婚していない。

晴貴の父親は、建築関係の仕事をしていて稼ぎは悪くないが、ギャンブル狂だった。

母親と離婚をした原因はそれ。

そして、ギャンブルでできた借金が貧乏の原因であった。

「俺さ、働こうと思ってんの。妻に逃げられるようなバカな親父だけどさ、最近は真面目にギャンブルもやめたみたいだし、親父を借金から救ってやりたい。だから、漫才をやめにしたい…。いいコネがあってさ、就職先が見つかったんだ。結構大手なんだ」

「うん…」

そこまで言われたら、漫才を続けたいなんて言えないね…。

「でもさ、漫才やめたら、もう珠希と会えなくなるじゃん。だから…だから、俺達、付き合わないか?これからは恋人として」

晴貴も私と一緒なんだ!
私も晴貴と会えなくなるのが嫌だから漫才をやめたくなかった。

…ヤバイッ!さっきより胸がドキドキしてきた。
顔も何か熱くなってきたし!

「うん、分かった。漫才はやめよう…」

私は照れ隠しに舌を出した。

「でも、これからもよろぴくッ!」