「くそっ、くそっ。またディズニー行こうって約束したのに!」

病院の一室で涙を流しながら壁を殴った。

陽菜は、助からなかった…。

あの時、バスの無線さえ生きていたら…

ケータイが圏外じゃなかったら…

バスが山中を走っていなければ…

後ろの方の座席に座っていれば…

俺が窓側に座っていれば…

あのバスに乗っていなければ…

いや、この旅行自体行っていなければッ!

「俺のせいだ。俺の、せいだ」

誰に言うでもなく、俺はそう言って、頭を抱え込んだ。

「違う、私のせいだ。私がディズニーに行く計画を立てたのは私だから…」

「違うよ。みんな私の誕生日を祝ってくれる為に東京に行ったんでしょ?だから私のせいだよ」

「違う!俺のせいや!」

「私が悪い!」

「私のせい!」

そんな言い合いを聞いていた、陽菜の母親が泣きながら叫んだ。

「誰のせいでもないわよ!」

母親はそう言って、病室から出て行った。

残った父親が、俺達に言う。

「君達が自分を責め合っても仕方ないよ。そう、仕方のない事…」

まるで自分に言い聞かせるような言い方が、悲しみに拍車をかけるようだった…。



陽菜の母親が出て行った後、入れ替わりのように、一人の男が病室に入って来た。

スーツ姿で50歳前後くらいだ。

「失礼致します。わたくし、山本運輸の竹下と申します。吉倉さんでしょうか?」

スーツの男がそう言い、陽菜の父親が応じる。

「はい、吉倉ですが?」

すると、いきなり男は、深々と頭を下げた。

「この度、我が社のトラックとバスが事故を起こし、バスに乗っていた吉倉さんが怪我をしたと聞きまして、お伺いしました。誠に申し訳ございません」

スーツの男がそう言い終わると、もう一人、男が病室に入って来た。
男は腕にギブスをはめ、頭にも包帯を巻いている。

「彼はドライバーの山口です」

スーツ姿の男が、ギブスの男を紹介した。

事故の原因は誰のせい?

俺のせい?

理沙のせい?

良美のせい?

いや、違う!

最も事故の原因に近い人物が目の前に現れたのだ!