言葉に詰まった。

良美がネズミー好きってのは、陽菜から良美を祝う計画を聞いた時に、陽菜が言っていたのだ。

「あ、いや、今日はしゃいでたから、好きなんちゃう?って思っただけ」

とっさに嘘をついた。
良美がはしゃいたでた…かどうかなんて分からない。良美ははしゃぐキャラじゃないし。

『実は今日ね、私、誕生日なの。偶然なんだろうけど、理沙と陽菜に今日ネズミーに行こうって誘われた時、すごく嬉しかった。だからいつもよりはしゃいじゃった』

良美はそう書いて、舌をペロッと出した。

それを読んだ俺はドキッとした。

良美は、俺達が今日良美の誕生日を意識してたって、知らないんだ。

「あ、そうか。そうなんや。今日誕生日なんや!なんか凄い偶然!いや、知らなかった。良美、おめでとう!」

ぎこちない言い方になって、焦った。

ここで計画がバレたら理沙になんと言われるか…。

しかし、そんなぎこちない言い方だったが、良美は満面の笑顔を見せて、『ありがとう』
と、メモ帳に書き加えた。


意外と、予想していた気まずさはなかった。

理沙に依頼された30分もすぐにすぎ、ケータイに陽菜から電話がかかった。

「あ、努。もう準備OKだし、そろそろ良美を連れて来てよ!」

「おう、分かった。そんじゃ、そっち行くわぁ」

電話を切って、良美に言う。

「ちょっと、陽菜達のトコ行こうや!」

不思議がる良美を、俺と陽菜の部屋に案内する。

良美にドアを開けさせ、押すように部屋の中へと促した。

良美が部屋に入ると、クラッカーが鳴り、陽菜と理沙が叫ぶように言った。

「良美、誕生日おめでとう!!」

一瞬、何が起こったのか理解出来ないような顔をした良美だったが、状況を把握すると、良美は涙を流した。

「う、う…」

え?誰の泣き声?

「あ…アリ…ガト」

片言のような小さな声。だけども、3人は聞き逃さなかった。

「良美ー!」

「あんた、声!」

「うわぁッ!やった!やった!」

良美自身、自分の声に驚いて口に手を当てた。

陽菜と理沙は泣きながら、歓喜の言葉を発し、交互に良美の頭をポンポン叩き合ったのだった。